イモリ研究の進捗状況は?
イモリの仕事を始めて丸3年が経ちました。
最初は本当に大変でしたがようやく少しずつ何かが見えてきました。
ツメガエルとの相違点と相同点を探すことが本来の目的で、
まあ単純に同じところと違うところを見れば良いと思って始めたのですが、
その見方をすると「何もかもが違う」としか言えませんでした。
「なんじゃ、これは??」って一瞬のパニック。
で、少し視点を変えて見直したら、
明らかに異なると思えていたところに類似性が見えてきます。
これに気付いたらもう面白くてたまらないわけで、
「なるほど、こう比較したらいいのか」って毎日がわくわくです。
しかし、どうみても全くもって類似性が見いだせないところも少なくありません。
ツメガエルでは当たり前のように思われている現象が
イモリではまったく違う・・・違うというかそんな現象そのものがイモリにない、
まあそういったこともたくさんあります。
面白いと言えば面白いのでしょうが、
まったくもゼロからの出発となるわけで、
さてなにをどうしたらいいのだろうか?と頭を抱えることにもなっています。
この流れでむかしを思い出しました。
今では有名な遺伝子の一つnogginが発見されたニュースは
そのころこの業界を駆け巡りました。
しかし、いつまで経ってもその詳細が出て来ない。
その頃はオーないざー遺伝子を見つけただけでCellが約束された時代ですから、
それが出て来ない理由がわからないのです。
で、その理由がわかって妙に納得した記憶があります。
それは、あまりにnogginが新規すぎて、過去の何の遺伝子にも似ていない。
だから、なにをどう解析したらその働きがわかるのか、
その方法論がわからないということだったそうです。
唯一わかっていたのはシグナル配列を持つから分泌タンパクだろうってことくらい。
いやあ、イモリにしても、ツメガエルや他の何かと少しでも似ていれば
突っ込むきっかけはあるのでしょうが、
いまのところは五里霧中って感じの現象もいくつかあります。
しかも、それらの現象はツメガエルでは明確に理解されていて、
両生類は統べてそうだと盲目的に思われているものだから余計にたちが悪い。
それから、これは直感的なもので証拠はまったくありませんが、
ツメガエルはなんとなくゼブラフィッシュに似ているように思えますし、
イモリはトリやマウスの発生に似ているような感じがします。
ってことは、もしかしたら現在見ている「五里霧中」も、
霧が晴れればその先には鳥類や哺乳類に通じる鍵が見えてくるのかも知れませんね。
いやあ、これこそが研究の醍醐味でしょう。
ところで、ユングのいう共時性ではないのですが、
イモリとツメガエルの原腸形成運動についてモデルをいま検証しています。
そして論文を書こうと思っていた矢先に、
八代高専の金田さんの総説が送られてきました。
その図を見てびっくりです。
我々が言おうとしていた図がそのまま載っているのです。
切り口は違いますし、主張の違いも少なくありませんが、
大枠でみたら同じことを言っている(ように見える)から、
我々の論文は、たとえ投稿したとしても、
結局のところ金田さんの焼き直しに見られるのは必至です。
これがあるから科学は怖いということですね。