ロールスロイスとボーイング

こういう逸話を聞いた事がある。

アラブの金持ちが砂漠をロールスロイスで瀑走していたところ

突然ドライブシャフトが折れた。

ドライブシャフトが折れたってどういう状況なんだろうと思うが、

それはさておき、とにかく無茶苦茶な運転をしていたのだろう。

で、携帯電話もない頃なのでどうするのかと思ったら、

さすがはアラブの金持ち、車に無線機を備えていた。

ロールスロイスに連絡をしたところ、

すぐにドライブシャフトを積んだヘリコプターが飛んできて

その場で交換してくれたそうである。

砂漠の真ん中でそんな事が可能なのか?という疑問はあるにしても

まあ、ロールスロイス社はそういうことをやってのけたという事だ。

で、後日、いつまで経っても修理代金の請求が来ないので

アラブの金持ちはロールスロイス社に連絡をしたところ、

「何かの間違いでございましょう。当社の車のドライブシャフトは折れません」

と答えられたという事である。

真偽のほどはともかくとして、ロールスロイス社の信用を物語る逸話として残っている。

 

話は変わって、御巣鷹の尾根に墜落した日航機の事故原因は未だ明確ではないそうであるが、

事故直後のかなり早い段階でボーイング社が圧力隔壁の修理作業のミスを公表した。

明らかにボーイング社の手抜き作業による事故であると発表したのだ。

そんなにすぐに発表できるくらい作業ミスが明らかなら、

どうしてその機体をそのまま放置していたのだろう?

それは非難されるべき事であり会社としては隠し通したい事ではなかろうか?

であるにもかかわらず、公表した理由は何だろう?

 

さて、これらをどう考えるのかだが、

たとえば自動車のドライブシャフトというものが折れるということは

少なくとも自動車を作っている側からすればあってはならない事であり、

それを認める事はすべてをなくす事に等しいと思える。

また、世界中の空を飛んでいるボーイング747型機が

原因不明の事故で墜落したとなればボーイング社の信頼が揺らぐ。

信頼が揺らぐどころか、その時点でも同型機が飛んでいるわけで、

これは実際問題として由々しき事態な訳である。

そこで、あっさりと事故の直接原因を明らかにする。

それがたとえ自社の大きな責任問題につながる事だとしても

ミスがあったのだから墜落したのであって

ミスさえなければ絶対に墜落しない飛行機であると

とにかく世間に知らしめなければならなかったはずである。

 

この、ロールスロイス社とボーイング社の話を思い出してみて

先を読んだ対応という「大人の」世界を見たような気がした。

決してその行動を誉めているわけではない。

むしろ、小賢しいとすら個人的には感じる。

しかし、全体を見通した対応である事は間違いないようにも感じる。

それに比べて日本の大企業は、

「そんなことを言ったらあとで大変なことになるのに」とか

「それを隠してもあとで絶対にバレて余計に大きな問題になるのに」

などと思うような対応をするところが何となくだが多いように思う。

どんな対応をしようが結果は変わらないにしても

世間に与える印象を考えたらすべき事としてはならない事があるようにおもう。

それが危機管理につながると考えるのは穿ち過ぎだろうか?