言葉が出ない
言葉が出ないって表現がある。たぶんいろんな意味があるのだろうが、私が「言葉が出ない」ときは、あまりに凄過ぎて自分が持っている語彙では表現できない場合だろう。「すごい」「美しい」を日常で使っていると、それを超えたものに出会った時に、これらの言葉で表現できなくなる。なんて言うのか、日常の言葉を使用することが、そのものの本質に対して礼を失するって気持ちになる。
以前にも書いたが、veryとかspecialのような強調の表現を論文で多用すると、結局は何も強調しないことと同じになる。読点も、多用すれば読点がまったくないことと同じになる。だから、論文では、本当に強調したい時以外には強調の形容詞や副詞を用いないように気をつけている。これは、すごいものを強調することが難しいので、それ以外を強調しないことで強弱を意識しているわけだ。要するに、何かを評価する時に行なわれることとはその他のものとの比較である。評価とはあくまでも相対的なものである。多用すればその効果は消失する。だからというのではないのだが、常日頃から人や物を褒め過ぎたりすると、いざという時に使える表現がなくなると思っている。何か感動的なものを見た時に使える表現を頑張って維持保存しているのだが、それでもそれを超えてすごいものに出会ったら文字通り筆舌に尽くしがたい、「言葉が出ない」のである。