漢字と仮名 2

漢字と仮名の使い分けについて「読みやすさ」を一番にと考えている、と書いた。では、読みやすさに違いがなければどちらを使うのかなのだが、私は仮名の方を好む傾向が強い。「全く」「例えば」「寧ろ」などはカナ表記にする。もしも私の文章にこれらが漢字で現れた場合には、変換ソフトが勝手に漢字にしたものに気づかず放置しただけである。山本周五郎の文章にも「しゅくん」や「しゅったつ」がひらがなで書かれていたりする。人名でも岡崎藩の当主・水野堅物忠之を「水野けんもつ忠之」と書いているのだが、彼はどのような理由(基準)で仮名書きを選ぶのだろう?

私の場合で言えば、たとえば複数の読みができる漢字はあえて使わない。「酷い」は「ひどい」とも「むごい」とも読めるし、「辛い」は「からい」とも「つらい」とも読めるので、前者なら仮名書きにするし、後者なら「からい」だけ「辛い」と漢字表記にし、「つらい」と読ませたい場合は「ツラい」と表記する。「辛い」と漢字表記した場合に私は「からい」と読みがちなのでこうしているだけで、他に特に意味はない。だから「辛い」を「つらい」と読みがちな人には私の文章は読みにくいものとなるだろう。逆に、仮名書きでは複数の意味にとれると思える場合には漢字表記にする。たとえば「済む」と「住む」などである。この場合はよほど漢字が続かない限り漢字表記にするし、たとえ漢字が続いていたとしても、これ以外の言葉をカナ表記にするだろうと思う。

また、これは携帯電話の出現によって増えたと感じるのだが、漢字にする必要のないものをあえて難しく漢字に変換しているものもあると思う。たとえば「兎に角」だが、「うさぎにつの」ってあえて漢字にしなくても「とにかく」で済む話だし、「ありがとう」もこのままカナ表記で済むし、個人的には仮名の方が美しいと思う。

まあ、ごちゃごちゃ書いては見たものの、あくまでも個人の趣味の域を出ない議論だし、私自身の文章にも例外はいくつもある。なんにしても、読みやすい文章を書きたいなと常日頃から思ってはいるのだ。