統計
人気投票について。よくテレビ番組で「100人に聞いた好きな城トップ20」みたいな企画を見る。それ自体は「ああ、そうなんだ」で終わるので構わない。でも、そのときによく考えることがある。たとえば、絶対にABがトップ2なのだが、「その二つを比べたら確実にAだよな」ってときに、100人に好きな城一つだけを投票させるとAが最多得票となる。それは構わない。ただ、もし、マニアックな城が好きな人も一定数いるとして、その人たちがABどちらでもない城を投票したとしたらBは2位にはならない。一位を決めるのであればこの方法で良いと思う。ただし、この方法では2位以下の「人気」についてはかなり疑問が生じる。一位の城を選択肢から除外したら、次に好きな城はBが多数になるはずだからだ。もうひとつ考えられることは、AB二つの城の人気が拮抗している場合には、票が二分する可能性がある。とすれば、実際には三位の城が「トップ当選」する可能性も残る。だから、この投票方式は、「好きな城トップ20」を正確に反映していると感じない。
ではどうすればいいのだろうか。こういうアンケート法については専門的な解析が多数あるのだろうから素人がごちゃごちゃいう話ではないと思うが、こういう「ごちゃごちゃ」を考えるのが好きなのでもう少し考えてみる。では、アンケート結果をとるときに一位から五位までを記載してもらったらどうだろう。そして、一位を5点、四位を4点という風に点数化して集計したらある程度は「民意」を表現できるかも知れない。ただ、この場合も、もし圧倒的な一位があった場合には、それはまったく反映されないこととなる。では各自の持ち点を十点とし、それを好きな城に配分する方法はいかがだろうか?絶対的にこの城!というのがあれば、その一つの城に十点すべてを配分すればいいし、二つの城の甲乙をつけ難いのであれば五点ずつ配点すればいい。と書くと、その人の中ではそれで完結するかも知れないが、他の投票者との比較においてまた問題が生じるかも知れない。甲乙つけ難い城が二つある場合に、他の城に対しては両者とも十点なのである。これを五点ずつにしてしまったら全体のなかでの価値が薄れる。
毎年の年末にいくつかの出版社から「ミステリベスト10」のようなランキングが発表される。これなんかは顕著だと思う。まず第一に、投票する人がその年に発表されたミステリ小説をすべて読んでいるのか?という問題がある。これは普通に考えてあり得ない。何冊かの小説をノミネートした上で、「この中から一番と思うものに投票する」のならわかる。それは、「その他にも優れた小説はあるかもしれないが、ここにノミネートされた小説の中からこの審査員が選んだものはこれだ」という限定がつけられるからだ。もう一つの問題は、第一の問題にも通じるのだが、その年の最初に出版された書籍と秋以降に出版された書籍では明らかに有利不利が生じる点である。年初に出版された書籍であれば、読んでみる機会も多いだろうが、年末に近づけば近づくほどその書籍を手に取るチャンスが減る。素晴らしい小説なら余計に年初に出版されていればその評判も耳に入りやすいだろう。
オールタイムベストを選ぶ時、時代が新しいほど得なのはわかりやすい。だって、例えば曲などでいえば、最近の曲の方が知っている人間の数が圧倒的に多い。1960年代の曲を知っているのは、よほどの懐メロ好きでない限り、その時代に物心がついていた人に限られる。ということは、いま60代半ばの人が最も若いこととなる。一方で2010年頃の曲になったら、いまの中学生より上の年齢ならとりあえず聞いたことはあるだろう。この議論で言えば、知名度ってのもある。知名度ランキングであれば問題はないのだが、その物や人の能力や魅力を比べて「どれが一番か?」を決める場合には、当然のことながら「審査員(投票者)」はすべての物(人)を知っていなければならない。先日もテレビ番組で歴代の高校球児のランキングをやっていたのだが、1970年以前の高校生で川上哲治なんて名前が出てきたのだが、この名前を知っている人はどれだけいるのだろう。今年還暦の私でも川上哲治はジャイアンツの監督という認識しかない。プロ野球選手としての川上を知らないのだから高校生の川上を知っているはずもない。これと、結果的に一位となった王貞治を比べて、投票した全員が両者のことを知った上で投票したとは思えないのだ。もちろん投票方式も、上に書いたように一人だけを投票するのか、複数投票アリなのか、ただ複数の名前をられるするのか、順位をつけるのか、順位を点数制にするのかによってもランキングは変わるだろう。
人を選べば死に票が増えるし政党を選べば死に票は減るが人を選べないなど、選挙で人を選ぶ場合も含め、投票によって本当に重要な選択をすることって難しいと思う。