初期胚における外胚葉

三胚葉は原腸形成運動によって作られる。それは脊椎動物の原腸形成運動の定義でもある。ということは、三胚葉は原腸胚以前には存在しないはずである。

しかし、私たち「カエル屋」は胞胚に三つの胚葉を見る。胞胚腔の屋根の部分は外胚葉と呼ばれ、帯域を中胚葉と呼び、残りの卵黄に満ちた部分を内胚葉と呼ぶ。おそらくはカエルの初期発生をしている研究者が各胚葉の予定領域を指して「予定〇〇胚葉」と呼んでいたものがいつの間にか「予定」がなくなってしまった結果なのだろう。だから、まだ胚葉ができる前からカエルには三胚葉が生じるという不思議なことが起きている。

種々の両生類の研究から私は「脊椎動物に外胚葉という概念を考える必要はない」と唱えているが、一部の方からご質問をいただくようにこの言葉は誤解を招くとも思っている。この言葉の意味は、分化運命の決定の順番として、予定外胚葉が決まり、次に外胚葉に特異的な組織(神経・神経堤・表皮)へと分化するという考えがおかしいのではないか、である。言い換えれば、「表皮や神経を外胚葉という」のは構わないが、「外胚葉から表皮や神経が分化する」という感覚は間違っている。こう考えるから神経堤までが外胚葉から生じるということになってしまう。表皮も神経も神経堤もepiblastから直接分化するのであって、いったん外胚葉に分化した組織からあらためて分化するのではないということである。

これは明確なことだと思うのだが、たぶんほとんど理解されないのだろうな。