「生命の起源」と「進化」
私が学生だった頃、偉い先生とお酒を飲みながら話していました。
話題は多岐に渡り、最後には生命の起源などという大きなテーマに至りました。
その先生が言うには「生命の起源は天才しか研究してはならない」ってことで、
その理由は「過去に一度しか起こらなかったことは実験によって再現できない」
「だから、馬鹿が訳の分からないことを言っても誰もそれを判断できない」ということでした。
さらに「進化は、実験的に検証できるから誰がなにを言っても構わない」と彼は続けました。
そのときは「へえ、そういうものなのか」と感心しきりでしたが
今ではさすがに私の考え方は変わっています。
進化ですらあらゆる可能性のうちのひとつが
たまたま偶然に選ばれたに過ぎないと私は考えています。
だから、実験による検証は進化に関しても意味がないのだろうと感じます。
逆に、もし実験的な検証が可能であるなら進化の過程は必然でなければならない訳で、
進化は偶然の産物であることを正しいとすれば
それは実験的には証明しようがないとしかいえないのだろうと感じます。
どうなのでしょうか????
私の中には「科学=偶然を必然として説明するもの、偶然性の中に必然性を見出すもの」というイメージがあるため、科学の結論において「偶然である」とくるとちょっと戸惑ってしまいます。
つまり橋本さんが「生命の起源や進化は「偶然」の産物である」と言われると(私もそう思っているのですが)、橋本さんのような専門家が使う「偶然」と私のような素人が考える「偶然」とは果たして同じ意味なのだろうかと考え込んでしまうのです。
こうした戸惑いが単に私の「科学」に対する誤解から来ているのか、あるいは科学が変わって「偶然を偶然として捉えるようになった」ことから来ているのかわかりませんが、科学において「偶然」ということばに出会うといつもちょっと戸惑いを感じてしまいます。
ちなみに橋本さんの先生は「生命の起源」も「進化」も必然的なものという前提で実験のお話をされているような気がするのですがが、これはこの先生の個人的な思想なのか、あるいは当時の生物学全体がこういう思想だったのかがちょっと気になります。