発生現象と生物種

さて、ゲノムDNAを後世に残すための装置として個体発生過程を考えると、

もちろん、なんらかの決定的な違いによって生じる種分化と、

それを形づくる個体発生過程の関連に思いをはせることとなる。

これは逆に考えると個体発生過程が同じでない限り生物種は異なるとできるだろう。

まあ、こんなにこねくり回した議論をするまでもなく、

異なる発生過程をたどる生きもの同士が同じ生物種だと考える方がむずかしい。

だから、成体として生じた生きものの違いを見るよりも、

その成体を作る過程を観察する方が進化をより雄弁に物語る可能性も考えられる。

これはたとえば、種は異なっても近縁な生きものは、

たとえ成体のかたちが大きく異なっていても発生過程がよく似ていることからもわかる。

すなわち、発生過程の普遍性と多様性を見ていけば、

互いの近縁性が見えることとなり、

それは結局その分類群における本質的な意味を指し示す指標ともなりうるのだろうと思う。

 

まあ、ここで実際の研究につながるのだが、

私は二種類の両生類の発生過程の比較から、

両生類がどのように生じたのかを考え、

脊椎動物がどのように生じたのかを研究している。

この場合にどの発生現象を比較するかで見えることと見えないことがあるだろう。

一見してまったく異なる発生過程に思えても

実は非常に似通っている場合もあるしその逆もあり得る。

発生をゆっくり見ることでゲノムの本質を知ることに期待をしても良いのではないだろうか?