天下りの話

天下りの話ってちょっと引いて眺めていると面白い。

たとえば、「先輩が天下っているから便宜を図るようになる」と説明され、

それを防ぐ方法が議論されていたけど、

どう考えたってこの議論はおかしいよね。

先輩がいるから便宜を図るってのは完全には否定はしないけど、

でも、そうではなくて、その天下り先を維持し続けないと、

自分が役所を辞める時に行くところがなくなるから便宜を図るわけで、

それも便宜というのはその天下り先に対する便宜というよりは、

税金を使って天下った人たちの給料を支えるという意味の便宜だろうから、

それは先輩の影響があろうがなかろうが関係ないと思う。

すべては天下りというかたちの維持のためであり、

すべては自分自身のためだということだと普通には思うはずだ。

 

で、なにが面白いのかと言えば、

こっちの「普通の」議論をされるとマズいからあえて的の外れた方向の議論を始め、

その対応策を「真剣に」議論するという構図にしているところ。

例えば、先日のAIJにからむ年金機構の問題で役所が言い出したのは、

「機構を監視する新たな機関を設置する」ということ。

いやいやちょっと・・・・それって新しい天下り先を作るってことと同義でしょ?

「焼け太り」って言葉はほとんど耳にしないけど、

でも、この構図ってまさに「焼け太り」に見える。

ちなみに焼け太りの辞書での意味は

火災にあったあと、かえって以前よりも生活や事業の規模が大きくなること」。

 

そういえば天下りに関連しての議論で「早期退職があるから天下りが増える」ってのがあった。

「風が吹くなら桶屋が儲かる」ってのをすぐに思い出すくらいおもしろい。

だって、早期退職があろうがなかろうが、

天下りを許すこととは本質的には何も関係ないじゃない。

早期退職をしたいヤツにはさせておけばいい。

それとは無関係に天下りを禁止すればいいだけのこと。

それを、「だから定年まできちんと仕事をしてもらう制度を・・・」って

おいおい政治家さんたち、こんな議論の代弁をしてどうする気なの?

って、これまたなんだか愉快に聞いている。

本当は怒り狂わなければならないのだろうが、

もはや落語の域に達している感すらある。

ただ、一つ希望は、こんな低いレベルで分かり易い議論のすり替えをしないで、

もっとレベルの高い、あとになって「あっ、そういうことか」と感心するような、

高度な議論のすり替えをして欲しいと思う。

それだけの学歴をお持ちの方々なのだからさ。

 

と考えていると東電の話はもっと稚拙で面白い。

東電社員の給料は公務員より安いですって説明した途端に

「たくさんいる高卒社員もすべて混ぜた上で、大卒公務員の高い給料と比べている」と

どこかの知事だか市長だかに指摘されて黙り込んでいたからね。

この議論って、公務員の給料の算定とまったく同じで、

公務員は民間を参考にって言っているけど、

従業員が何十人か以上の、一定の規模の会社のみを参考にして、

ボーナスはおろか給料さえも満足に出ないような

日本に存在する大多数の中小企業の数字をいっさい入れないのだから。

だから、業績好調の大きな企業の給料と比べて公務員の給料を決め、

その公務員の給料と比較して東電の給料を決めるって構図がわけもなく面白い。

いやあ、この手の議論って小学生の時にするやついたけど、

さすがに大人になってからは恥を覚えるのか久しく聞かなかった。

それだけに妙に新鮮でおもしろい。

 

お役人の議論って、その議論の中に巻き込まれず引いたところから見ると、

この手の詭弁が随所に見られてなんだか感心することが多いなあ。