イモリの難しさ

今までツメガエルしか触ったことのない人間が

イモリを扱い始めてその難しさに閉口してきました。

なにが難しいのかと言えばまあいろいろありますが、

一つの大きな点としては「発生が遅い」!

 

ただ待てばいいだけでしょ?って以前の私なら思っていました。

しかし、解析しているとけっこう大きな問題だと気付きます。

例えばツメガエルを考えてみると、

ある発生段階にとどまっている時間は比較的短いので、

外部形態から判断する発生段階ですべて共通のことが言えます。

しかし、イモリでは発生時間がツメガエルの3倍はかかりますので、

見かけ上はおなじ発生段階と判断される胚をとっても、

その遺伝子発現の様子が違うのです。

ある遺伝子が次の遺伝子の発現を促すのに例えば2時間かかるとしましょう。

ツメガエルではこの2時間で外部形態も変化しますので、

結果として同じ形をしている胚は同じような遺伝子発現のパターンを持つと言えます。

しかし、イモリでは同じ形をしているうちにも

新たな遺伝子発現を起こさせるに十分な時間があります。

まあ、おそらくこれは実際には逆で、

形態形成運動をしながら遺伝子発現の制御を行ない、

次の形を作り上げていくイモリに対し、

ツメガエルでは、形態形成運動の前に遺伝子の発現パターンは決まっている。

だから、あとは細胞や組織の並び替えをするだけで形を作り上げられるということです。

だから、パッと見で同じ形だからと言って同じ遺伝子発現をしているとは限りません。

これはツメガエルの研究者にとったら大問題です。

繰り返しになりますが、

これまで「発生段階11の胚ではこの遺伝子がこう発現していて」と記載してたのが、

発生段階11の胚でも細かい発生時期の違いによっては異なる遺伝を発現するわけで、

そうすると、「この段階の胚ではこの遺伝子が・・・」なんて書けなくなる。

すると途端に論文での記載が難しくなるという訳です。

特に、観察していると、突然発現の見えなくなる遺伝子がある。

その直後にぜんぜん異なる場所に発現が始まるということが普通に起こる。

同じ形の胚でその遺伝子がある場所に発現していたり、

また別の場所に発現していたり、さらには発現が全くなかったりということが

起こっていることになります。

だから、この順番を間違えてしまうと解釈も間違えることとなる。

いやあ、これはけっこう厳しいですよ。