巧い文章
寒い季節には風呂で読書をします。
で、先日も本棚から文庫を取り出して読んでました。
阿刀田高のエッセイだったのですが、
感心した文章をみつけました。
彼がまだ貧しい大学生だった頃を書いていて、
その流れでキセル乗車の話になっていました。
その中に括弧書きで「(国鉄さん、ゴメンナサイ。当時はやっていたのです)」とありました。
この最後の「当時はやっていたのです」は日本語としては非常に下手な文章だと思います。
「当時、(キセルが)流行っていた」のか
それとも「当時は、(キセルを)やっていた」のか分からないからです。
だから、このての文章を学生が書けば私は間違いなく直します。
しかし、文章の名人・阿刀田高がこう書けば話は別で、
間違いなく両方の意味に読者が誤解する(?)ように意図して書いているはずです。
だから、ここを読んだ時にうなりました。
下手な文章技術を逆手に取るというのは自分の技術に確かな自信がないとできません。
いやあ、大したものですが私には一生マネはできないだろうな。