三原色

先月のことになるが、実験室見学ツアーでミニレクチャーを行なった。私がいつも話す内容は、「科学は客観的ではない!」ということ。要は、己の感覚器官によって外界からの信号を認識し、その情報が脳で処理されて初めて理解することとなるのだから、それを主観と言わずしてなんと言うのだということである。だから、脳に何らかの形で情報が入れば、実際にそのものがあろうがなかろうがその存在を認識できるのである。だから、幻視・幻聴の類いもまったく変な話ではない。

そんな内容を話すために、例として色の三原色の話を持ち出した。一般に、それらの組み合わせでどんな色でも作りうる三つの魔法の色があると考えられているのだが、それは人の網膜上にある光受容細胞が持つオプシンの吸収波長が三種類しかなく、それらの組み合わせでしか人は色を感じられないだけの話であり、そのオプシンに突然変異が入れば三原色は別の色となるはずである。だから、決して物理的に特別な色の性質があるのではないという話なのである。

その説明の際に、色の三原色と光の三原色を混同して話してしまった。話の本質には何も影響はないのだが、間違った知識を皆さんに与えてしまった。しかも、聴衆のひとりから間違いを指摘されたにもかかわらずである。あとになって気付いた時にはもう遅く、申し訳ないやら恥ずかしいやら・・・・。光の三原色は全て混ざると白になる。全ての視細胞を刺激するのだから当然のことである。それに対して色の三原色は全て混ざると黒になる。光と色の違いは足し算で考えるか引き算で考えるかの違いなのだが、これを混同して話してしまったのである。

穴があったら入りたい・・・・。