IPS騒動で・・・

見えてきてびっくりしたものはこれだけの詐称が見つけ出せなかったこと。

新聞社や近所のおじさんへの嘘はあり得るようにも思うのだが、

東大などで雇用する際になぜ気付かないのだろう?

論文だって所属していない所属先を書いて、

ひどい時には存在すらしないところを所属先として投稿しているわけで、

これが実はバレないと言うこと、

そしてこのバレなかったことを、

のちのちに嘘の「証拠」としてその経歴詐称の裏付けに利用するという事実に

驚愕してしまうのである。

 

ただし、分からないでもないことはある。

私が留学から帰国した際に、日本で放射性同位元素を用いる実験の許可を得るとき、

それまでの機関でも使用実績があり教育されてきた証明書が必要であり、

たとえば日本国内での移動であれば大学の権威あるところで作成された証明書が要求されるのだが、

アメリカにはそういう機関がないし、そういう証明書そのものが存在しない。

少なくともその時代の私の留学先ではそのようなものはなかったために、

研究室のボスに証明書を書いてもらった覚えがある。

要するにまあ一介の大学教員が勝手に作成した書類にその人のサインが入ったものである。

これは間違いなく簡単に偽造可能である。

 

また、これは国内外を問わずだろうと思うのだが、

その論文の一部でも協力してもらった場合には

その研究者の名前を論文に入れるのは当然のことであり、

逆に、協力してもらったにもかかわらず名前を入れないなどできるはずはない。

でも、その論文自体にその研究者はほとんど関与しない場合も多くある。

極端な例で言えば、ある研究室に所属している時に見つけた遺伝子を使い、

移籍先の研究室で研究し論文にしたとする。

この場合にも、前所属先のボスの名前は論文に入るのが当たり前なのだ。

 

こういった場合には、名前を入れられた研究者が論文の中身にまで普通は関与しない。

これはもう紳士協定というか、信義の問題なのだ。

世話になった人に、同僚に、知り合いに迷惑をかけないというのは当然のことだし、

バレるバレないではなく自分の所属を正確に書くことは

理屈ではなく当たり前のことなのだ。

それが崩壊したことが今回の騒動で分かった。

ゴキブリを一匹見れば裏に何十匹かいるといわれるが、

今回のような不正は彼一人だと信じたい。