新入り
もう4〜5年前だったかな、
アメリカの友人が遊びにきてウチに4日ほど泊まったことがあります。
姫路城を見に行き、奈良の大仏を見に行き、通天閣を見、
梅田も難波も、神戸も京都も強行軍で連れ回りました。
その時に、彼は少し疲れたのか「ウチの近所で食事をしたい」と言いましたが、
私は須磨に引っ越してきたばかりで周囲の店を知らなかったので
“newcomer”だから須磨では食事をしないと彼に伝えました。
私が言いたかったのは「新しく来たのでこの辺りをほとんど知らない」ということだったのですが、
彼は「嫌がらせをされるのか?」と聞いてきました。
もうご理解いただけると思いますが、
newとcomerで「ここに来て日が浅い」として使った言葉なのですが、
そして間違いなくそういう意味もあるのですが、
この言葉の意味は「新入り」あるいは「新参者」であり、
まだ周囲の人と馴染んでいないというニュアンスがたぶんにあるという訳です。
辞書を引けば「新来者」とありますので、
そこにこのニュアンスを見いだすのは私には難しかった。
で、何が言いたいのかといえば、
これは意味は文脈によって決まるという好例で、
彼との会話によってその言葉が使われる状況が理解できる訳です。
日本では「〜したほうがいい」と表現する時には
“had better~”を使うと教えられるのですが、
実はこれは少々誤解を招きます。
おそらく、命令形から始まって相手に何かをさせる表現のうち
当たりのキツいのから順に並べて日本語に置き換えていった結果として、
命令形なら「〜しろ!」と訳し・・・、となって、
“had better”は「した方がいい」になったのだろうと想像しますが、
この表現は、命令形よりはゆるいのですが、でも「強制」にかなり近いのです。
これも、現地で話していて「何かおかしい」って感じから体で覚えました。
また、shouldとhave toの違いも、
これは皆さんご存知でしょうが(←この言葉については後述します)、
私は似たようなものだと思っていました。
「すべきである」と「しなければならない」って、
日本語で言われたらどちらにしても同じように私なら感じるからです。
しかし、アメリカで一時帰国する時に親に土産を買うか買わないかという話をしてた時に、
“You don’t have to but you should!”といわれてその意味が明確に分かったのです。
言語に限らず、どんな意味もそれが使われる文脈により決まります。
それが言語だと、それを使う人口も多いし、過去からの時間的なことも考え合わせると
その言葉(単語でも熟語でも何でも構わない)使われる頻度が膨大ですので、
結果として経験的にその単語はこういう意味として用いるというふうに
「定義」として辞書に掲載されるようになるのですが、
でも、例えば赤ちゃんが言葉を覚える時には辞書は引きません。
もっと言えば独立した単語という概念もなければ、
文法なんて概念などあろうはずもないでしょう。
ある単語の意味は、様々な文脈からいつも繰り返される同じ音を
独立した単語(あるいは単位)として切り出すところから始まり、
それが使われる種々の文脈から意味付けするってことだろうと思います。
さて、これは以前にも書いたような気はしますが、
日本人は非常に良く口にするけれど英語を母国語とする人は絶対に言わない言葉として
As you knowがあります。
私もこのコラム中にしっかり書いていますが、
日本人は謙譲の意味合いで「当然あなた様はご存知の事でしょうが」と言います。
それを英語に直訳しただけの言葉なのですが、
アメリカ人には不思議で仕方ないそうです。
「そんな事、知っているはずがないじゃないか」ってことらしいです。
などと、先日、このアメリカの友人とメールでやり取りをしていて、
ふと思い出した逸話から話が膨らみました。