アメリカでの生活

大谷さんの通訳の問題が世間では騒がれているので(というわけでもないのだが)、アメリカでの生活について書いてみようと思う。ただ、私自身のアメリカ生活はもう30年前の話になるので今のようなネット社会でもないし、なにより大谷さんと橋本如きではそもそもの生活レベルが異なるので、ただ「橋本はそうだった」というだけの話になる。

アメリカに行くと今の日本でのマイナンバーに相当する「ソーシャルセキュリティナンバー(社会保障番号とでも訳すのかな?)」を取得する必要がある。そのほかには当然のごとく住むところを決めて銀行に口座を開いて、電話を通して、水道ガス電気などの手続きをしてとさまざまなことをしなければ生活は始まらない。ここで問題は、言語が英語であるというところではなく(もちろんそれは大きな問題ではあるのだが)、社会習慣そのものが日本とはまったく異なることである。

ちょっと話は飛ぶが、アメリカで自身の銀行口座にお金を預け入れる時、日本ではATMで電子的に行なわれるのだが、私が住んでいた頃のアメリカ(南カリフォルニア)では銀行の「ポスト」のようなところに現金を入れた封筒を差し込むだけであった。だから、現金を入れたという証拠などどこにも残らない。銀行の人が着服して「そんな封筒など入っていなかった」と言われたらそれで終わるという、ものすごく不安なものだった。書き出したらキリはないのだが、細かなこと一つ一つが日本とはまったく違っていたように感じた。

さて、アメリカに来た時の話、それぞれの手続きは、もちろん一人でしなければならないことなのだが、やはり右も左も分からない環境では誰かの手助けが必要だった。日本人留学生の場合は先に来ている日本人が助けてくれることが多いだろう。家を決めるのにも手助けが必要だし、銀行口座を開くのも手助けが必要だった。また、(今は変わっているかもしれないが)当時は「銀行引き落とし」の制度はなかったから、月々の支払いは小切手を切ることが一般的だったと思う。

口座開設の時に日本人の友人に助けてもらった。助けてもらったというより、ほとんどすべてをその人にやってもらった。暗証番号も、「暗証番号はどうしますか?」と聞かれて答えたように思う。アメリカでは印鑑などなくすべてはその人それぞれが考えたサインである。サインは、ただの署名というよりは自署を図案化した「花押」の感覚に近い。他人に真似られないようなデザインを個々人が考えて用いる。そう知ったのはアメリカで生活を始めてしばらくしてからだった。だから、アメリカに渡った当初は非常に読みやすくローマ字で自分の名前を書いていた。また、日を追うごとにサインは変化していったから、アパートの1年後の更新の時に「サインが違う」と言われた。だから、日本人が書くサインを真似することもそれほど難しいとは思えない(個人的には、日本人はサインを日本語(漢字)で書くことをお勧めする。漢字は英語でchinese characterと呼ばれるように、文字というよりは「特徴」のニュアンスが強いから、欧米人には模様として認識されやすいのでサインの本来の目的に適っている)。

方向がずれてきたので修正します。

さて、今の大谷さんの話を以下に書こうと思うのだが、まず第一に現状を把握できているかと言えばまったくそんなことはなく、新聞の見出しを斜め読みしたくらいの知識しかないので、すべては私の妄想であることはあらかじめ申し上げておく。新聞の見出しから得られた情報によると、なぜ(どうやって)通訳が大谷さんの口座からお金を移動できたのか?という疑問が大きな問題になっているように感じるので、そのことについて考えてみたい。

大谷さんの場合には、私などよりもさらにそういう生活面に関しては他者の手助けを要したと感じる。いや、手助けというよりも完全に他人に任せていたはずだ。日々の支払いに関してもおそらく自分自身で行なっているとは思えない。大谷さんあたりになると家賃でも数百万くらいにはなるだろうし、その支払いを月々ご自身がしているとは思えない。もちろん納税にしてもそうだし、CM契約など野球以外のビジネスに関してもそう。全国の小学校にグローブを送った時に発生するであろう諸々の事務手続きなども含めて、最終的なサインはご本人がするのだろうが、その手前までは大谷さんが指名した代理人が行なっていることは間違いない。お金の出し入れに関しては、会計事務所だったり税理士事務所だったり、あるいは俗にいう「代理人」だったり、目的によって異なる人が関与しているだろうし、社会的にも十分に信用できる個人や団体がその任にあたっていることは疑いないと思う。ただ、ここで一番問題と考えられるのは、それら独立した情報すべてがいったん通訳に集約されることだろう。大谷さんの意見や考えは通訳の言葉として伝えられる。代理人の言葉も通訳から大谷さんに伝えられる。それ以外のやり方は考えにくい。だから、たとえば通訳が「〇〇のお金の振り込みが必要だ」と言えば、一つ一つ細かい請求(その種類や金額、あるいはその真偽)などを大谷さんが把握しているとも思えないので、それらは正式なお金のやり取りであると大谷さんは考えるしかない。

もう一つ考えられるのは、上記のように口座の開設が大谷さん個人ではなく第三者が行なえるような環境である(もちろん書類上は大谷さんが契約していることとなるのだろうが、銀行関係の専門用語満載の、しかも英文で書かれた書類を即座に理解してサインすることが現実的にできるとは思えない)ので、通訳が大谷さんには内緒で大谷名義の別の口座を開くことはそれほど難しいことではないと思う。もちろん最終的なサインなどは大谷さんがする必要はあるだろうから偽講座ではなく正規の口座を開設することになる。その際に「〇〇についてサインする必要があるから一緒に銀行に行ってほしい」とすべてを任せている人(すなわち通訳)から言われたら大谷さんだって疑わないだろう。逆に言えば、ここを疑うような人にこれまですべてを任せてきたはずはない。で、その時に登録する電話番号やメールアドレスを通訳個人の、あるいは通訳がその目的のために開設したものにすれば、その後の連絡は通訳本人に届く。2段階認証にしてもone-time passwordは通訳個人の携帯やメールに送られてくることとなる。あるいはone-time passwordを作る機械なども通訳が所持することだって普通にできると思う。口座名義は大谷さんなので、数十億円になるCMなどのギャラの振込先をその口座に指定することも可能だろう。正規のルートで数億円のお金を通訳が自由に動かすことがそれほど難しいとは思えないし、大谷さんの口座に無理をして侵入しお金を盗む必要はないと考えられる。というか、スポンサーから何十億円も振り込まれ、税金にしても少なくとも何億円(あるいは何十億円)も振り出される口座、日本の小学校へグローブを送るために6億円もの金額を支払うことのできる口座、それもおそらくは大谷さんが自ら手続きをするとは思えない口座の出入りの詳細を大谷さん自身がいちいち把握しているとも思えないし、数百万円単位であれば日常的に引き出し放題ではないだろうか。

こういうことが本当に起こっているかどうかは知らない。しかし、原理的には十分に可能であるということである。アメリカの富豪も大谷さんと同じようにさまざまな代理人を通して経済活動を行っているだろう。彼らが、納税や日々のお金の出し入れのすべてを個人で仕切っているとは思い難い。ただ、最終判断は本人がしているはずだ。最終的な書類に目を通してサインすることは当然しているだろうと思う。しかし大谷さんの場合、英語で書かれた分厚い契約書の一語一語を読んでからサインしているとは思えない。説明を受けたとしても、その説明は通訳を介してなされる。この点に大きな問題があると思っている。

これらはすべて可能性の問題に過ぎない。言語も習慣も異なるアメリカという社会で日本人が生活すると起こりうる(起こってもおかしくない)ことであって、それが正しいかどうかは別の問題だ。真実はいずれ明らかになるのだろう。この妄想がどれだけあたっているのか、それともとんでもない的外れに終わるのか?ミステリ(謎解き)マニアとして少し興味がある。