考える会(原腸形成)
「考える会」という集まりを不定期に開催してます。一番初めは高校の生物教科書の問題を扱いました。生物の教科書を作っている5社の編集さんにお集まりいただき、さまざまな議論を行ないました。十年以上も前のことになります。五年くらい前から、学習指導要領が大幅に変わり、教科書も変わってセンター試験もなくなるという大変革の時期を迎え、これからの生物教育はどのようになっていくのか?について考えました。そこで出た一つのアイデアが、高校生物の先生方にお集まりいただき、生物学について「先生方に考えていただく」ということです。
まずは題材として原腸形成の「橋本モデル」について考えていただきました(両生類の原腸形成機構、両生類の新しい原腸形成モデル)。難しい実験は何ひとつ行なっていませんので研究に馴染みのない方にでも直感的にご理解いただけます。実験の生データをご覧いただき、そこから考えられることを議論していただきました。現行のモデルはどのような実験結果から作られたのか?現行モデルでは説明できない実験結果が出てきた場合に、モデルはどのようにしなければならないのか?などについて学生時代に戻って考えていただきました。3〜4人の班に分かれて班の中で議論していただく。面白いアイデアが出てきたら全体に発表してもらいそこから議論を深め、また各班に分かれて新たな議論をスタートすることを繰り返します。最終的に答え合わせをしますが、正解があるわけではないのでとりあえずその時点で科学の世界に受け入れられている仮説やモデルの解説をします。
先生方には概ね好評で、ご感想での中に多くいただいているものとして、「偉い先生のお話をただ聴かせていただくような研修会ばかりだったが、今回のように自分たちで考え議論することで新しい何かが見えてきたように感じられて有益だった」「今後の授業へのヒントをいただいた」「また参加したい」などがありました。生徒に教える立場の先生方が、一つの現象について一所懸命に考え議論することで新しい見地が開けるというのはこの会を企画している目的の一つですので、そういうご感想をいただけることは嬉しいの一言につきます。
最初は、なぜだか関西ではなく愛知県での開催でした。続いて京都・大阪・兵庫で複数回の開催。初期の頃は毎回反省の日々でしたが、なんとなく手応えも掴めるようになって、開催地域も神奈川・広島と広がり、また同じところで連続してお呼びいただけるようにもなって、少しずつではありますが知名度も上がってきたのかも知れません。講演では九州や四国・北陸とお呼びいただくこともありましたが、できたら多くの先生方に「考える会」をご経験いただきたいなあと思います。そして、ご経験に裏打ちされた知識やご意見を知り合えた先生方から頂戴して、さらに効果的な会へと進化させていけるように努めます。