つらつらと4
なぜ、分子や遺伝子の研究を面白いと思えないのか?だが、遺伝子や分子はただの道具であり、進化の過程でそれが選ばれたのは偶然であって、その遺伝子や分子自体にはまったく意味がないと考えているからなのだろうと思う(ここでいう「意味」については「形についての小論」をご覧ください)。進化の過程のどこかでその遺伝子をたまたま使った結果その構造を作ることになったとして、ではその構造形成にその遺伝子が必要(必然)なのかと言えば、決してそんなことはないだろう。脊椎動物を定義する細胞として神経堤細胞があげら得る。定義するというのだから、神経堤(細胞)は脊椎動物にしか存在しない。しかし、神経堤細胞のマーカー遺伝子はショウジョウバエゲノムにも存在する。脊椎動物の出現は神経堤細胞の獲得に依存するのは事実だろうが、神経堤特異的に発現するマーカー遺伝子の獲得に依存するものではないということだ。進化を語るには偶然を考えなければならない。しかし、生物学者、特に分子生物学者はそこに「必然」を持ち出してくる。無理に「意味づけ」をしたがる傾向が強い。ここに興味を持てないわけだ。
ただ、誤解しないでいただきたいのは、そういう研究が面白いと思っている研究者を否定するつもりはない。というか、私のように発生学、特に形づくりについて興味がある人もいるが、細胞の中に興味がある人もいれば、たんぱく質(分子)に興味がある人もいる。反対に生態学や分類学に興味を持つ人もいる。
結局は単なる嗜好の問題におちつく。4回に分けていろいろ書いてきたけど大した内容にならなかったな。またどこかに続くかもしれませんが、今回はとりあえずここまで。