つらつらと3

両生類の原腸形成運動にしても、教科書で普通に勉強したらかなり難しい。というか、「いや、これって前に書かれている部分と矛盾するやろ」ってところが多かった。「背側化活性が強ければ頭部が大きくなり、腹側化活性が強ければ頭部が小さくなる」って普通にどう考えるのかわからなかった。でも、それを理解することが重要であるとされていた。先生方は教科書のモデルをちゃんと理解されていたようだが、私には無理だった。私たちは原腸形成運動を説明する新しいモデルを提唱している。このモデルによると、これまで難しいと感じられてきたことが簡単に理解できる。天動説で惑星の動きを記載できるのかもしれないが、これは極めて複雑な方程式によってしか説明できないだろう。しかし、地動説で考えたら極めて単純な方程式で記載することができるようになる。これと同じ感覚である。このモデルに関しても、偉い先生からは「はいはい、シュペーマンが間違えていた、それがどうした!」という評価しか得られなかった。よく勘違いされるのだが、私の新しいモデルは「対シュペーマン」ではない。あくまでも脊椎動物の進化につながる一つの仮説として提案しているのだが、書き方が悪いのかそこがまったく理解されない。あるいは、ただの組織運動の記載しかしていない(分子機構にまったく触れていない)ことが理由とされてかなり低評価である。これは愚痴ではなく、私自身を顧みても、世間一般で高い評価を受ける論文をまったく面白いと感じられないので、同じことなのだろう。脊椎動物の初期発生が砂時計の形に近くて咽頭胚のところでボトルネックになっているというのは有名だが、これだけ同じ原腸形成運動をしていれば、脊椎動物の間で咽頭胚の形が似ているのは当然のことだろうし、逆に考えれば、咽頭胚を形成するなんらかの必要性があったからこそ原腸形成運動に変異が入り得なかったのかもしれない。こういう議論が重要だと思っているのだが、なかなかさせてもらえない。