医師免許

歯科医師以外は同じ医師免許を必要とすることは多くの人が知っているだろう。眼科医も医師免許を持っているが、外科の詳細はおそらく知らないだろうし、外科医であっても、その分野の世界の最先端を把握しているとは思わない。私も生物学の専門家だし、「博士号」を持ってもいるが、生物学全般の知識があるかと言えばそれはない。もっと言えば、過去に自分が書いた文章を自分が読んで「ほう、そうだったのか」と感じることも少なくないように、自分の専門分野ですら、少し時間が経てばすぐに忘れることもままある。だから、「弁護士」との肩書を下げていても、すべての法律に詳しいとは限らないと考えた方がいいだろう。離婚などを専門とする人もいるだろうし、刑事弁護を得意とする者もいるだろう。会社経営やM&Aなどに詳しい弁護士もいるだろう。それぞれに特有の専門があるに違いない。だから、テレビのワイドショーで「弁護士」の肩書をあげて何でもかんでもコメントしている人をあまり信じない。

兵庫県知事は、内部通報者保護法の専門家が「現時点でも法を犯している」とすることすらも、県の御用弁護士の意見を重用して「法的に問題ない」とする。「法律家の中でも意見が分かれる」というところに関しても、その専門家の中で意見が分かれることを、ただの「弁護士」の資格を持っているだけの(その分野に精通しているわけでもない)たった一人の人間の意見をよりどころにして「法的に問題ない」とする。最初に、「内部通報者の問題」に精通している弁護士に少しでも意見を聞いていたらこういうことにはならなかっただろうけれど、問題はそこではなく、最初にこの(兵庫県御用達の)弁護士に聞いたところにこの県知事の恣意性が見て取れる。あとの議論の展開は、ちょっと頭のいい小学生とあまり変わらないくらいにバカっぽい。